POT
1.POTの概要
(1)POTとは
POT(Paramedic Orbital Training)は、平成25年2月に「救急振興財団における今後の教育・研修のあり方等について」で示された提言に基づき、財団の専任教授が救急救命士心肺機能停止前トレーニングとして開発した救急救命士向けの教育プログラムです。
救急救命士が、心肺機能停止前における特定行為の可否を判断するために必要な理学所見等の鑑別力を向上させるトレーニングにより、適切な救急救命処置による心肺機能停止の予防を目的としています。
(2)POT事業の概要
POTは、全国の消防本部、メディカルコントロール協議会及び消防本部等からの求めに応じ、財団の専任教授が講師として全国各地に出向き、高度シミュレーター等の資器材を活用して行う出前講座型の講習方式を取っています。
講習内容は、受講対象者によりPOT Basic、Advance、Facilitatorの3コースがあり、受講者が疾病と病態に応じた写真、イラスト、音声、動画の全身画像を見ながら初期観察及び全身観察を行い、鑑別から必要な応急処置までの主要テーマ(判断項目)に沿って自らの理学所見から特定行為の可否等を判断し、講師の解説、指導により正しい方向に導くことにより鑑別力を向上させ現場実践力を養う内容となっています。
POT症例リスト
1. 心疾患 | 1 左心不全 |
2 前下行枝心筋梗塞 | |
3 前下行枝心筋梗塞による心室中隔穿孔 | |
4 右心不全 | |
5 乳頭筋断裂による僧帽弁閉鎖不全症 | |
6 僧帽弁閉鎖不全症 | |
7 心タンポナーデ | |
2. 脳疾患 | 8 髄膜炎 |
9 くも膜下出血 | |
10 脳出血 | |
11 脳梗塞 | |
12 脳ヘルニア | |
3. 呼吸器疾患 | 13 喘息 |
14 慢性閉塞性肺疾患(COPD) | |
15 気胸 | |
16 窒息(上気道閉塞) | |
17 緊張性気胸 | |
18 排煙 | |
19 肺血栓塞栓 | |
4. 消化器疾患 | 20 出血性ショック |
21 敗血症性ショック | |
22 敗血症性ショック(急性膵炎) | |
5. 代謝性疾患 | 23 高血糖1.糖尿病性ケトアシドーシス |
24 高血糖2.非ケトン性高浸透圧性昏睡 | |
25 低血糖発作 | |
6. 内分泌疾患 | 26 甲状腺機能亢進症(バセドウ病) |
27 副腎皮質機能低下症(急性副腎不全) | |
7. 腎疾患 | 28 敗血症性ショック |
29 腎性心不全・肺水腫 | |
30 腎性高カリウム血症 | |
31 急性腎不全 | |
8. 心電図 | 32 頻脈性不整脈 |
33 徐脈性不整脈 | |
34 致死性不整脈(Brugada症候群) | |
9. 外因 | 35 偶発性低体温症 |
36 熱中症 | |
37 アナフィラキシー | |
38 神経原性ショック(脊髄損傷) | |
10. 小児 | 39 溺水 |
(3)実施状況
実施状況は、平成26年度は試行として7回実施し受講者が484名、本格実施の平成27年度は15回実施し受講者が474名、以降、令和2年度までの累計は58回実施して受講者は1,998名となっています。